相続した実家、売る・貸す・置いておく
税金で数百万円変わる分かれ道
思い出の家だからこそ、決め方は数字で。
写真はイメージです。Photo: Lucas Calloch(Pexels)
「とりあえず置いておく」も、立派な選択の一つです。ただし、置いておくあいだに期限が切れる制度があります。
公開日:2026年10月20日
親が住んでいた家を相続したとき、選べる道は大きく3つです。売る、貸す、置いておく。
どれが正解かは家によって違います。ただ、どの道を選んでも、先に知っておかないと損をする制度が3つあります。この記事ではその3つを先に書き、最後に「売る」場合の税金を仮の例で計算します。
先に知っておく制度① 相続登記は「義務」になった
2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をすることが義務になりました。正当な理由なく放っておくと、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象になります。
2024年4月より前に相続した家も対象です。 この場合の期限は2027年3月31日です。親の代、祖父母の代の名義のまま放ってある家がないか、一度確かめてください。
売るにも貸すにも、まず名義が自分たちになっている必要があります。どの道を選ぶ場合でも、ここが出発点です。
先に知っておく制度② 空き家を放置すると、固定資産税の軽減が外れることがある
人が住むための家が建っている土地は、固定資産税が軽くなる特例があります(200㎡以下の部分は、税額計算のもとになる額が6分の1になる)。
ところが2023年12月13日に施行された改正空家法で、管理が行き届いていない空き家として自治体から「勧告」を受けると、この特例から外れることになりました。対象はそれまでの「特定空家」(倒壊の危険があるなど)に加えて、その手前の「管理不全空家」にも広がっています。
「置いておく」を選ぶなら、置いておくための管理費用(草刈り、換気、見回り)も、かかるお金として数えておく必要があります。
特例から外れたときに税額が何倍になるかは、土地の評価や自治体の計算で変わります。「6倍になる」と書かれることがありますが、実際には別の調整があるため、正確な額はお住まいの自治体で確認してください。
先に知っておく制度③ 売るなら「最大3,000万円」の特別控除。ただし期限と条件がある
親がひとりで住んでいた家を相続して売る場合、条件を満たすと、売って出た利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります(相続空き家の3,000万円特別控除)。
主な条件
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること(マンションなどは原則として対象外)
- 亡くなる直前まで親が住んでいて、ほかに同居者がいなかったこと(一定の条件で老人ホームに入っていた場合も対象)
- 相続してから売るまでのあいだ、人に貸したり事業に使ったりしていないこと
- 売った金額が1億円以下であること
- 相続した年から数えて3年目の年末までに売ること
- 売るときまでに耐震改修か取り壊しをすること(買主が翌年2月15日までに行う形も可)
期限は、2027年12月31日までの売却です。国土交通省は4年延長を要望していますが、2026年10月時点では決まっていません。
また、相続人が3人以上の場合、1人あたりの上限は2,000万円になります(2024年1月1日以後の売却)。
この特例で一番見落とされやすいのが、3つ目の条件です。「とりあえず貸して、何年か家賃をもらってから売る」と、この特例は使えなくなります。 貸すか売るか迷っているなら、貸す前に、売った場合の税金を一度計算しておく価値があります。
仮の例で、売る場合の税金を比べる
次の前提を置いて計算します。すべて仮の数字です。
- 売れた金額:2,500万円
- 親がいくらで買ったか分からない(この場合、売れた金額の5%を買った値段とみなせる=125万円)
- 仲介手数料など売るための費用:100万円
- 親の代から5年を超えて持っていた土地・家(長期の扱い。税率は所得税・住民税・復興特別所得税で合計20.315%)
売って出た利益は、2,500万円 − 125万円 − 100万円 = 2,275万円です。
| ケース | 差し引ける額 | 税金のかかる利益 | 税金(20.315%) |
|---|---|---|---|
| 特例を使えない(貸した後に売った、など) | 0円 | 2,275万円 | 約462万円 |
| 特例を使える(相続人2人以下) | 3,000万円まで | 0円 | 0円 |
| 特例を使える(相続人3人以上・1人分の例) | 2,000万円まで | 275万円 | 約56万円 |
相続人3人以上の行は、仕組みを示すため1人で2,275万円の利益が出た場合として単純化しています。実際は持ち分に応じて利益が分かれます。特例を使うには、税金が0円になる場合でも確定申告と、市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。
同じ家を同じ値段で売っても、売り方と時期だけで約462万円の差が出ます。
では、3つの道をどう比べるか
| 入ってくるお金 | 出ていくお金 | 注意すること | |
|---|---|---|---|
| 売る | 売却額(一度きり) | 仲介手数料、取り壊し・耐震改修、税金 | 3,000万円控除の期限(2027年末)と「3年目の年末まで」の両方を確認 |
| 貸す | 家賃(毎月) | 修繕・リフォーム、管理委託料、空室の期間、固定資産税 | 一度貸すと3,000万円控除は使えなくなる |
| 置いておく | なし | 固定資産税、草刈りや見回りの管理費、交通費 | 管理が不十分だと、固定資産税の軽減が外れることがある |
考え方の順番としては、まず「売ったらいくらになって、税金はいくらか」を出すのがおすすめです。それが分かれば、貸す・置いておくを選んだときに「何を手放しているのか」が金額で見えます。
売った場合の金額は、不動産会社に査定を頼むと分かります。査定は無料のところが多く、1社だけでなく複数社に頼むと、相場の幅がつかめます。
実家の売却査定の相談先を見る査定を頼むときに確認することもまとめていますまとめ
- 相続登記は義務。2024年4月より前の相続分は2027年3月31日まで
- 空き家を放置して勧告を受けると、固定資産税の軽減が外れることがある
- 売るなら最大3,000万円の控除。期限は2027年12月31日まで(延長は未定)
- 一度貸すと、この控除は使えなくなる
- 迷ったら、まず「売ったらいくら・税金はいくら」を出してから比べる
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 仙台市「空家等対策の推進に関する特別措置法」改正に関する案内(改正法の施行日・勧告と住宅用地特例)
- 新日本法規「相続した空き家、売却する前に確認を ― 3,000万円特別控除の現行制度と今後の改正動向」(2026年10月9日)
本記事は一般的な情報であり、税務・法律の個別の助言ではありません。実際の判断は税理士・司法書士などの専門家、または税務署・自治体にご確認ください。税率・制度は掲載日時点のものです。